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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)2019号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人水田猛男の上告受理申立の理由第一点について。

論旨は質屋営業法による質屋業者の貸金行為に対しては、「貸金業等の取締に関する法律」は適用なきものであると主張する。なるほど同法二条一項は、その取締の対象たる「貸金業」の中から「その他その業を行うにつき他の法律に特別の規定のある者の行うもの」を除外している。そうして質屋営業法第一条は、この法律において「質屋営業」とは物品を質に取り、……金銭を貸付ける営業をいう、と規定している。それ故質屋が質物を担保として行う金銭貸付行為が、前記法律二条一項の貸金業の除外例にあたり、同法の取締の対象とならないことは所論のとおりである。しかし本件のように質物を取らないで金銭を貸付けた場合は質屋営業として法律上許容された行為ではないから、同法の適用を受けるものと解するを相当とする。かく解することは、同法が、質屋営業法とは異なった取締り目的を有することから見ても、当然のことである。それ故これと同趣旨に出た原判決は正当であって論旨は理由がない。

なお論旨は、本件被告人の貸金行為が有価証券を担保とする質屋営業の範囲とも見られる、と主張するけれども、被告人の本件貸付行為が貸金業としての形態を具えたものであってこれを質屋営業と認むべきでないことは、原判決の判示するところによっておのずから明らかである。

同第二点について。

貸金業等の取締に関する法律の「業として行う」というのは、反覆継続の意思をもって同条所定の行為を行うことを意味するのであるが、所論のように反覆継続の貸金行為が三ケ月内にあったことが必要であると解すべき理由はない。第一審及び原審判決の認定したところに従えば、被告人の行為はまさに前記各条件に該当すること明らかであるから、これを同法違反の罪に問うた原判決には所論のような違法はなく論旨は理由がない。

なお記録を調べてみても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって同四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見を以て、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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